●【12SACD】ブルックナー:交響曲全集(第00番~第9番)/シモーネ・ヤング&ハンブルク・フィル トップ

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単発でリリースされたハイブリッドSACD11点12枚をまとめました。第8番のみ日本語解説つきの国内盤でほかは輸入盤です。5点は日本語帯つき。ボックスセットにまとめられたものは残念なことに通常CDでした。せっかくの優秀録音ですから、装置をお持ちの方はぜひ芳醇な音質のSACDで全曲をお楽しみください。国内・輸入盤ともに現在廃盤で入手困難となっているものもあります。ディスク・ライナー・ケースともに概ねキレイな【交響曲第00番】この交響曲は、ブルックナーが30代の終わりに、作曲の師でもあるオットー・キッツラーの指導を受けたのちに書かれたものの、その師からあまり評価を得られませんでした。そのため演奏もされませんでしたが、しかしブルックナー存命中に破棄されることもなく、没後17年を経た1913年には楽譜も出版、初演もおこなわれる運びとなっていきました。それから60年後の1973年には、ノヴァーク校訂による原典版も出版、実演ではあまり演奏されないながら、録音は次第に増えていき、シャピラ、ロジェストヴェンスキー、インバル、ティントナー、アシュケナージ、スクロヴァチェフスキ、ボッシュらによる演奏がリリースされています。作風はメンデルスゾーンやシューマンの影響を感じさせる聴きやすいもので、部分的にのちのブルックナー・スタイルを感じさせるものがあるなど、ロマン派好きやブルックナー好きには注目度の高い作品といえるかもしれません。面白いのは実際の演奏時間で、ボッシュの36分からロジェストヴェンスキーの51分まで、その差は実に15分もあります。シモーネ・ヤング盤は約42分。妥当なテンポ設定でじっくり楽譜情報に取り組み、各声部の巧みなコントロールと和声感の見事さで着実な成果をあげています。
【交響曲第0番】ブルックナー40代なかばに書かれており、曲順としては第1番のあとに位置しますが、ブルックナー自身によって「0(ドイツ語でヌルテ)」とされてしまったため、習作のような扱いを受けてきました。しかし実際に聴いてみると、後に第3番や第9番にも使われた素材が数多く登場し、さらにブルックナー的な雰囲気も備わっているので、他作品と同様、覚えて慣れさえすれば、魅力ある初期交響曲として十分に楽しむことができるものと思われます。CDもすでに20種類以上が発売されており、これまでにさまざまな指揮者とオーケストラが、それぞれの主張の込められたアプローチを展開、38分のショルティから53分を超える下野まで、演奏時間も大きく異なっていました。今回は、49分38秒というじっくり目のテンポで細部情報まで丁寧に扱っています。
【交響曲第1番】使用楽譜は初稿ということで、ここでは1865/66年に書かれた第1稿、いわゆる「リンツ版」の最初の姿をウィリアム・キャラガンが校訂したヴァージョンが用いられています。これは通常のノヴァークとハースによる「リンツ版」が、1877年におこなわれた改訂を含むものとなっているためで、さらに1891年に加えた大胆な改訂を反映した「ウィーン版」との比較も興味深いところとなっています。 このキャラガン校訂版の録音はこれまでティントナーによるものしかありませんでした。
【交響曲第2番】初稿による演奏で、亡きギュンター・ヴァントのお膝元でもあるハンブルクのムジークハレ(現在の名称はライスハレ)で大きな話題を呼んだ演奏会のライヴ録音。対向配置&優秀録音という好条件を背景に、次々に現れる魅力的な旋律の洪水とも言うべき作品の魅力を、雄大なスケールの中に克明に描きこんだ素晴らしい演奏です。競合盤のティントナー盤とアイヒホルン盤はやや枯れ気味でしたが、このシモーネ・ヤング盤での生き生きと躍動し、クライマックスでは雄渾な音響を轟かせるパワフルなアプローチは、ブルックナーの初期作品にふさわしいもの。すごいのは楽員たちの表現力の豊かさで、いったいどれだけさらったのかと思わせるほど細かい部分にまで気持ちが入っており、指揮者との良好な人間関係を思わずにはいられません。第1楽章の第3主題(呈示部[03:17-]、展開部[08:09-]、再現部[14:16-])などほのぼのとした旋律もリズムが良いのでワクワクするほど魅力的に演奏されています。一方、第4楽章では動と静のコントラストも強烈に、指揮者、楽員ともども途切れることのない集中力で力強い音楽を構築してゆきます。シモーネ・ヤングが取り上げた初稿は、オットー・デッソフ指揮ウィーン・フィルによって試演された、作曲者の原意が最も強く反映されたヴァージョンであり、ウィリアム・キャラガンが校訂した楽譜を用いています。この初稿はやがて、デッソフの「長すぎる」という発言と、ヨハン・ヘルベックの「聴衆に合わせるべき」という助言を受けて、スケルツォの反復省略、終楽章56小節短縮、一部差し替えという形で正式に初演され(第1稿初演版:アイヒホルン)、その後、大規模なカットや差し替え、休符の削除といったさまざまな改訂やミックスを経て、現在一般的な第2稿ハース版(朝比奈、バレンボイム&CSO、シャイー、エッシェンバッハ、ハイティンク、インバル、コンヴィチュニー、マズア、スクロヴァチェフスキ、シュタイン、ヴァント、ツェンダー)や、第2稿ノヴァーク版(ジュリーニ、カラヤン、ヨッフム、D.R.デイヴィス、ロジェストヴェンスキー、ショルティ、若杉)、第2稿キャラガン版(バレンボイム&BPO)という形に姿を変えてゆきます。つまりブルックナーの第2交響曲で最も情報量が多く、かつまた「パウゼ交響曲」ともあだ名されたパウゼの効果がよくあらわれているのがこのヴァージョンなのですが、そもそもこの初稿の校訂を、レオポルト・ノヴァークがウィリアム・キャラガンに依頼したのが1987年の話で、1990年には簡易な形で出版に漕ぎつけるとは言うものの、正式なヴァージョンの出版は2005年になってしまったという出版事情の問題もあり、録音はこれまでにアイヒホルンとティントナーのものしか存在しませんでした。ということで、このリリースは、正式ヴァージョン出版後の演奏という点からも大いに歓迎されるところです。演奏時間比較タ:ヤング :20:40+10:47+19:32+20:23=71:22(2006)ティントナー:20:50+10:53+18:00+21:19=71:22(1996)アイヒホルン:19:40+10:59+15:42+20:55=67:16(1991)
【交響曲第3番】近年人気上昇中の第1稿を使用。この第1稿は「詩と音の芸術の前人未到の世界的に顕著な優れた大家であるリヒャルト・ワーグナー閣下に、深甚の敬意をもって」献呈されたといういわゆる初稿。トリスタンやワルキューレなど、ワーグナーからの引用がいくつか見られるもので、ワーグナーは気に入ったといわれており、1982年録音のインバル盤以降、確実に人気を高め、現在では、インバル(2種)、ナガノ、ノリントン(2種)、ノット、ティントナー、ロジェストヴェンスキー、ヴィルトナー、ブロムシュテット、ボッシュ、バロー、飯森、ネゼ=セガンなど、すでに数多くのCDがリリースされています。第1楽章:第2稿、第3稿に較べて100小節近く長い第1稿の第1楽章には、この曲の渾名『ワーグナー』の由来となるワーグナー作品からの明確な引用が含まれているのが特徴。展開部終わりの『ワルキューレ』の“眠りの動機”が一番目立つもので、この音楽のあとに冒頭部分が再現される箇所にはなんとも言えない魅力があります。第2楽章:第1楽章同様、第1稿では、ワーグナーからの引用が削除されずに残っているため、はじめて聴くとけっこう驚かされる部分があります。具体的には、第1主題変奏ブロックに『タンホイザー』序曲の巡礼主題のイメージが投影されているという部分と、コーダに、第1楽章と同じワルキューレの動機が用いられている部分の2箇所ということになります。第2稿第3稿との大きな違いでもある構成上の相違点、つまり、ベートーヴェンの第9にならったと思われる並列的な変奏スタイルもブルックナー好きにはたまらないところで、第1主題の美しい変奏がたっぷり聴けるのはやはり快感です。 第3楽章:第1稿スケルツォ楽章の大きな特徴である主部主題の構成単位の不規則性は、後の版では規則的なものに改められ、流れが良くなるぶん、野卑なまでの荒々しさという要素が減退していたのはよく知られているところです。第4楽章:第1稿とほかの稿との差異が特に目立つ楽章。ソナタ形式の構造概念に比較的忠実な第1稿は、3つのヴァージョンの中で最も規模が大きく、主題の再現や回想などもきちんとおこなわれ、なおかつ休止が頻繁なために、独特の激しく闘争的な雰囲気が漂うのが特徴。未整理な混乱という見方もありますが、ベートーヴェンの第9よろしく、素材回顧を入念におこないながら、古典的な様式セオリーに取り組む姿は、やはり魅力的といえると思います。
【交響曲第4番】第1稿を使用。通常親しまれている第2稿と比較すると、第3楽章スケルツォが全く別の音楽であったり、第4楽章に5連符が執拗に用いられ、ポリリズムをフル・オーケストラで処理するなど、ブルックナーのけっこうワイルドな原意のおかげで演奏困難な部分を多く含むのも特徴ですが、慣れてしまうと非常に面白い音楽であることも確か。インバルによるテルデック盤で広く知られるようになり、近年は録音量が増える傾向にありますが、シモーネ・ヤング盤は中でも高水準なものとして注目度の高いものです。
【交響曲第5番】ブルックナー中期の傑作、交響曲第5番は、強弱と表現上のコントラストの非常にはっきりした音楽に特徴があります。迫力満点のトゥッティから静かで抒情的な美しい旋律、楽しげな舞曲のリズムから荘厳なコラールと、それら諸要素を聴き手の脳裏に強烈に刻印する対位法の効果的な使用により、実演はもとより、レコーディングでも圧倒的な感銘を受けることの多い作品として近年ますます人気が高まっています。
【交響曲第6番】交響曲第6番は、第7番と同じく、前半2楽章が後半2楽章に較べてかなり大規模なバランス配分になっているのが特徴。第2楽章が荘重なアダージョというのも共通ですが、第1楽章はごつごつした第6番に、流麗な第7番と対照的でもあります。シモーネ・ヤングは、パワフルな両端楽章とスケルツォをエネルギッシュに演奏、第2楽章第3主題での葬送を思わせる旋律も美しく聴かせています。
【交響曲第7番】ブルックナー作品の中でも旋律の美しさでは第2番と共に際立った存在でもある第7番は、第2番で素晴らしい演奏を聴かせていたシモーネ・ヤングにはぴったりの作品と思われるだけに演奏内容も期待できます。(HMV)
【交響曲第8番】第1稿使用。第1楽章の最後が大音量で終わるというこの初期ヴァージョンは、第2稿とはまた違った野趣に富む荒っぽい部分が魅力的でもすし、ある種のくどさがブルックナーらしくもあります。
【交響曲第9番】ブルックナー研究で知られる音楽学者、ベンヤミン=グンナー・コールス[1965- ]校訂による「ブルックナー協会版全集」の一環として2001年に出版された新クリティカル・エディションを使用。従来のオーレル版、ノヴァーク版に代わるものとして、誤植の修正作業のほか、自筆譜以外の資料にもあたって綿密な校訂が施されており、ブルックナーの意図をより細かい点で実現したものということです。
【プロフィール】シモーネ(シモーン)・ヤングは、1961年3月2日、オーストラリアのシドニーに生まれ、そこでピアノと作曲を学びました。貝殻を形どった外観で名高いシドニー・オペラ(ハウス)でアシスタントを務めていた1985年、急病の指揮者に変わり、わずか数時間という予告で見事に代役を務め、センセーショナルなデビューを果たしました。 その後奨学金を得てヨーロッパに留学、ケルン市歌劇場でコレペティ、アシスタント、専属指揮者を務め、パリではダニエル・バレンボイムのアシスタントとしてパトリス・シェローの演出による伝説的なベルク『ヴォツェック』の上演にも携わり、バイロイト音楽祭の『ニーベルングの指環』のアシスタントなどもこなしてその実力を蓄えていきます。 1993年から1995年まで、ベルリン州立歌劇場の専属指揮者を務めるとともに、その間に世界各地の名門歌劇場に客演して短期間のうちに名声を築き上げました。それには1993年、ウィーン国立歌劇場での『ラ・ボエーム』公演で、女性として初めて歌劇場管弦楽団を指揮したこと、パリ・バスティーユ・オペラ、コヴェントガーデン・ロイヤル・オペラ、フィレンツェ五月祭、バイエルンとハンブルクの州立歌劇場が含まれます。 また、コンサート指揮者としてもシュターツカペレ・ベルリン、ミュンヘン・フィル、ハンブルク・フィル、ニューヨーク・フィルなどの指揮台に招かれていますが、1997年には、ウィーン・フィルを2005年11月、ウィーン楽友協会で156年の歴史上はじめて振ったことでも世界的な話題になりました。1999年から2002年までベルゲン・フィルの首席指揮者、2001年から2003年までシドニーとメルボルンのオーストラリア・オペラの首席指揮者兼芸術監督を務め、2005年からハンブルク州立歌劇場のインテンダント兼フィルハーモニーの音楽総監督(GMD)に就任し、精力的な活動を繰り広げています。 わが国でも1997年と2003年にNHK交響楽団に客演指揮して、好評を博しています。また2006年にはハンブルク高等音楽演劇院の教授に就任し、後進の指導にもあたっています。(HMV)
【収録情報】ブルックナー:交響曲全集Disc1● 交響曲(第00番)ヘ短調 WAB99 [41:56]第1楽章 Allegro molto vivace [14:36]第2楽章 Andante molto [11:50]第3楽章 Scherzo: Schnell [05:20]第4楽章 Finale: Allegro [10:10]録音:2013年2月22-26日
Disc2● 交響曲第0番ニ短調 WAB100[49:38]第1楽章 Allegro [16:58]第2楽章 Andante [13:39]第3楽章 Scherzo: Presto - Trio: Langsamer und ruhiger [07:43]第4楽章 Finale: Moderato [11:18]録音:2012年5月20-21日
Disc3● 交響曲第1番ハ短調 WAB101 1865/66年第1稿(リンツ版)録音:2010年1月
Disc4● 交響曲第2番ハ短調 WAB102 1872年稿(キャラガン校訂)[71:22]第1楽章 Ziemlich schnell [20:40]第2楽章 Scherzo: Schnell [10:47]第3楽章 Adagio: Feierlich,etwas bewegt [19:32]第4楽章 Finale: Mehr schnell [20:23]録音:2006年3月12-13日
Disc5● 交響曲第3番ニ短調 WAB103 1873年稿[68:35]第1楽章 Gemasigt Misterioso [25:26]第2楽章 Adagio Feierlich [19:20]第3楽章 Scherzo Ziemlich schnell [06:40]第4楽章 Finale Allegro [17:09]録音:2006年10月14-16日
Disc6● 交響曲第4番変ホ長調 WAB104『ロマンティック』 1874年第1稿 [70:00]第1楽章 Allegro [19:54]第2楽章 Andante quasi allegretto [18:28]第3楽章 Sehr schnell. Trio. Im gleichen Tempo [12:45]第4楽章 Finale : Allegro moderato [18:53]録音:2007年12月1-3日
Disc7● 交響曲第5番変ロ長調 WAB105 [73:20]第1楽章 Adagio - Allegro [19:56]第2楽章 Adagio [16:59]第3楽章 Scherzo: Molto vivace [13:02]第4楽章 Finale: Adagio - Allegro moderato [23:23]録音:2015年3月1-2日
Disc8● 交響曲第6番イ長調 WAB106 (1881) [54:34]第1楽章 Maestoso [15:26]第2楽章 Adagio: Sehr feierlich [16:08]第3楽章 Scherzo: Nicht schnell-Trio. Langsam [08:36]第4楽章 Finale: Bewegt, doch nicht zu schnell [14:24]録音:2013年12月14-16日
Disc9● 交響曲第7番ホ長調 WAB107 (ノヴァーク版) [66:29]第1楽章 Allegro moderato [21:38]第2楽章 Adagio. Sehr feierlich und sehr langsam [21:42]第3楽章 Scherzo: Sehr schnell [10:24]第4楽章 Finale: Bewegt, doch nicht schnell [12:45]録音:2014年8月29,30日
Disc10-11● 交響曲 第8番ハ短調 WAB108 1887年第1稿(ノヴァーク版) [82:36]第1楽章 Allegro moderato [16:05]第2楽章 Scherzo: Allegro moderato - Trio: Allegro moderato [14:37]第3楽章 Adagio Feierlich langsam, doch nicht schleppend [27:44]第4楽章 Finale: Feierlich, nicht schnell [24:10]録音:2008年12月14-15日
Disc12● 交響曲第9番ニ短調 WAB109 [57:58]第1楽章 Feierlich, misterioso 荘重に、神秘的に [24:32]第2楽章 Scherzo. Bewegt, lebhaft - Trio. Schnell スケルツォ。軽く軽快に-トリオ。急速に [11:50]第3楽章 Adagio. Langsam, feierlich アダージョ。遅く、荘重に [22:36]録音:2014年10月25-27日
ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団シモーネ・ヤング(指揮)
録音場所:ハンブルク、ライスハレ録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)

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